「自己とは何か」を問う衝撃の入れ替わりサスペンス――押見修造『ぼくは麻理のなか』レビュー

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「もし目が覚めたら、自分の身体が別人のものになっていたら?」

押見修造による漫画『ぼくは麻理のなか』は、そんな突飛な設定から始まりながら、自己喪失や家族関係、他者理解といった深いテーマに踏み込んでいく衝撃作です。私はこの作品を読んで、「自分とは何か」「他人とどう向き合うか」について、改めて考えさせられました。

はじめに

「入れ替わり」というモチーフは、少女漫画から実写ドラマまで幅広く描かれてきました。しかし、押見修造の『ぼくは麻理のなか』は、その定番の題材をただのラブコメや青春ドラマに収めず、人間の内面と孤独をえぐり出すように描きます。読む者を不安にさせつつも、ページをめくる手が止まらない――そんな独特の読書体験が味わえる作品です。

あらすじ

友達も彼女もいない大学生・小森功は、コンビニでよく見かける女子高生・吉崎麻理に密かに憧れを抱いていました。
ある夜、いつものように彼女を尾行していた功は、不思議なことに気がつくと麻理の体の中に入り込んでしまいます。
突然「女子高生」として生きることになった功。麻理の友人関係や学校生活を過ごすうちに、麻理自身にも「外からは見えない秘密」があることに気づいていきます。

見どころ

① 押見修造らしい人間の“痛み”の描写

表面的には青春ストーリーですが、読んでいると強烈に「生きづらさ」や「孤独」が伝わってきます。
押見修造作品らしく、人の醜さや弱さを正面から描きつつ、それでも読者に「共感」を抱かせる筆致は圧巻です。

② 入れ替わりモノの新しい解釈

入れ替わりといえば“ドタバタ”や“ラブコメ”が定番ですが、本作は真逆。
むしろ「自分ではない他人として生きること」の怖さ、そして「相手の内面をのぞくこと」、「本来誰も知り得ない相手の秘密を知ること」の重さ、背徳感が描かれている。特に、麻理の心の奥に潜む真実が少しずつ明らかになる展開は、スリラーを読んでいるような緊張感があります。

③ 読後感の余韻

最後まで読むと、ただの入れ替わりではなかったことが分かります。そこに待っているのは意外な真実。
驚きとともに「人は本当の自分を隠して生きているのでは?」と考えさせられる終わり方で、余韻が長く残ります。

まとめ

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わり青春モノと思って読み始めると、その奥深さに圧倒される作品です。人間関係の闇や、自分という存在の不確かさを浮き彫りにするストーリーは、読後にふと自分自身を振り返らせます。

「ただのラブコメじゃ物足りない」「もっと人間の内面を描いた漫画を読みたい」という人には、強くおすすめしたい一冊です!!!

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