【名作文学を読む】三島由紀夫『金閣寺』——美しさに取り憑かれた青年の行き着いた先
読書の時間が少しだけ増えるこの季節。
まとまった時間を使って、いつもは手に取らないような名作文学に挑戦してみるのはいかがでしょうか?
今回は、戦後日本文学の代表的作品、三島由紀夫の『金閣寺』をご紹介します。
「ちょっと難しそう」「重そう」と敬遠しがちかもしれませんが、だからこそ、静かな夏の日にじっくり味わいたい一冊です。
実際にあった放火事件をもとに描かれた物語
この小説の背景には、1950年に実際に起きた「金閣寺放火事件」があります。
一人の青年僧が、あまりに美しすぎる金閣寺を「自分の手で壊したい」と考え、実際に火を放った事件。その実話をもとに、三島由紀夫は犯人の心理を深く掘り下げ、小説という形に昇華させました。
あらすじと魅力
主人公・溝口は、生まれつき吃音を持つ内気な青年。周囲となじめず、自身の外見や境遇にも劣等感を抱きながら育ちます。
幼い頃から「この世で一番美しい」と父から聞かされてきた金閣寺。その美に強く憧れた彼は、やがてその寺で修行することになります。
しかし、実際に目にした金閣寺は、自分の中の理想とは違っていて美しくない。その「現実の美」と「理想の美」のギャップに失望します。
物語は、「絶対的な美」への執着と嫉妬、そして破壊衝動を、息詰まるような心理描写で描いていきます。
なぜ今、この本を読むべきか?
- 読書に集中できる時間がある今だからこそ、少し重厚な文学作品に挑戦するチャンスです。
- 主人公・溝口は、コンプレックスに苦しみ、孤独に苛まれ、美に嫉妬します。それは現代を生きる私たちにとっても、他人事ではない感情です。現代の私たちにも共通する「劣等感」や「自己否定」「理想と現実のギャップ」といったテーマが描かれている本作はきっと何か感じ、学べるものがあるでしょう。
- 「美しさ」に対する憧れと嫌悪、その両極が描かれており、読後に自分の中の価値観が揺さぶられるような読書体験が待っています。
読み終えた後に残るのは、「難しい」という感想だけではない
確かに、三島由紀夫の文体は少し難しく感じられるかもしれません。
ですが、丁寧に読んでいくことで、その緻密な言葉選びと感情の流れに引き込まれていくはずです。
そして最後の一文——
燃え上がる金閣寺を見届けた溝口が、「生きよう」と思う瞬間。
そこに至るまでの彼の苦悩と選択を追体験することは、読者にとっても深い自己対話の時間になるでしょう。
こんな人におすすめ
- 名作文学に挑戦したい人
- 哲学的なテーマが好きな人
- 劣等感やコンプレックスを抱えていた経験がある人
- 「美しさ」や「理想」に囚われたことがある人
まとめ:この本を読んで、自分と向き合う時間を
『金閣寺』は、ただの事件小説ではありません。
それは、一人の青年が「美」によって生き方を翻弄される物語であり、同時に「人はどこまで自己を受け入れられるか」という問いを投げかけてきます。
実際に『金閣寺』では、火を放つまでの“過程”が丁寧に描かれています。
「彼が火をつけたこと自体」ではなく、「なぜそこまで追い込まれたのか?」という金閣寺を燃やす過程を細かく書かれています。
美しさとは何か? 自分にとっての「理想」とは何か?
そんな問いを、自分の中に見つけられる一冊になるはずです
興味を持った方は、ぜひこちらからチェックしてみてください👇
コメント