千紗の正論
物語の冒頭では千紗がお客さんと揉めてしまいます。
安全を優先する千紗の意見は決して間違っていません。
ダイビングに慣れている人であっても、油断が事故につながる可能性があります。むしろ経験があるからこそ、安全への配慮を忘れてはいけないという千紗の考えは正論でした。
しかし千紗はその正論をベテランのお客さんへ真正面からぶつけてしまいます。
お客さんも自分の経験に自信を持っているため、強く注意されると簡単には引き下がれません。
言っている内容は正しくても、伝え方によっては相手に受け入れてもらえない。
千紗の真面目さと不器用さが表れた場面でした。
そんな中で千紗とお客さんの間に入ったのが伊織です。
伊織はお客さんをベテランとして立てたうえで、その行動を周囲の初心者も真似してしまうと説明しました。
だからこそ、経験者にはお手本となる行動をしてほしい。
言っている内容自体は千紗とほとんど変わりません。
しかし相手を否定するのではなく、ベテランとして頼りにする形へ言い換えたことで、お客さんも素直に納得できました。
内容を変えず、相手が受け取りやすい方向へ持っていく。
普段の伊織からは想像できないほど見事な対応でした。
周囲からインストラクターに向いているのではないかと言われたのも納得ですね
否定する母親
送別会ではインストラクターを目指す千紗に対して、母親が「向いていない」とはっきり告げます。
千紗は真面目ですが、不器用で愛想もよくありません。
その性格のままインストラクターになれば、余計な苦労を背負うことになる。
それなら普通に就職し、ダイビングは趣味として楽しんだほうがいいというのが母親の考えでした。
母親なりに千紗の将来を心配しているのでしょう。
しかし、夢に挑戦しようとしている本人にとっては、応援してほしい母親から向いていないと言われるのはつらいことです。
また、千紗に足りない部分を指摘するだけで、どうすれば乗り越えられるのかまでは教えてくれません。
そのため千紗には、母親が自分の夢を一方的に否定しているように見えてしまいますね
勇気を出して本音を伝えた千紗
それでも千紗は、自分の気持ちを母親へ伝えようとします。
勉強をおろそかにせず、大学もきちんと卒業する。
そのうえで一度、インストラクターになることへ挑戦させてほしい。
千紗は条件まで説明したうえで、自分の夢をはっきりと言葉にしました。
普段から感情を表に出すことが苦手な千紗にとって、これは大きな一歩だったと思います。
ところが母親は、その話をまともに取り合ってくれません。
千紗からすれば、勇気を出して伝えた本音を無視されたようにしか見えませんよね。
結局、空港へ向かうまで二人の関係は変わりませんでした。
千紗も、母親とはもう話すことがないと言い切っています。
この時点では、母娘が分かり合えないままパラオ編が終わってしまうように見えました。
伊織が店へ引き返した本当の理由
伊織たちはそのまま飛行機で帰国する予定でした。
しかし空港へ向かう途中、伊織だけが何かに引っかかり、店へ引き返します。
その結果、伊織は飛行機に乗り遅れ、自分のバイト代を使って別の便で帰ることになってしまいました。
ここだけを見れば、いつもの伊織らしい間抜けな展開です。
しかし、伊織が店へ戻った本当の理由は千紗の母親について確かめたいことがあったからでした。
伊織は母親が電話を持ち替える様子などから、耳に何らかの問題があるのではないかと気づいていたのです。
普段はふざけてばかりいる伊織ですが、他人のちょっとした仕草や違和感を見逃さない。
そして千紗のために、飛行機へ乗り遅れてまで確かめに戻る。
今回の伊織は、本当にカッコいいですね。
左耳が聞こえなかった
伊織が確認した結果、千紗の母親は左耳が聞こえていないことが判明します。
以前インストラクターをしていた母親は、耳の不調を抱えながらも、無理をして潜り続けていました。
その結果、耳を悪くしてしまったようです。
つまり千紗が勇気を出して夢を語ったとき、母親はその言葉を意図的に無視したのではありません。
そもそも千紗の声が届いていなかったのです。
この事実によって母親の行動に対する印象が大きく変わります。
千紗へ冷たい態度を取ったことも、インストラクターに向いていないと言ったことも取り消されたわけではありません。
それでも、娘の話を聞く気がなかったわけではないと分かっただけで、千紗にとっては大きな意味があったと思います。
伊織へ素直に感謝する千紗
最後にはいつも伊織に対してツンツンしている千紗が、素直に感謝を伝えます。
千紗が伊織へまっすぐお礼を言うのは、かなり貴重な場面でしたね。
母娘の関係はまだ完全に変わったとは言えません。
直接話し合ったわけではないし、千紗がインストラクターを目指すことを母親が認めたとはいえ、これもまた直接ではない
それでも、母親が自分を一方的に拒絶していたのではないと知ったことで、千紗の中では確実に一歩進みました。
それもこれもすべて伊織のおかげです
自分のために行動してくれた伊織に対して、千紗が飾らずに感謝を伝える。
二人の距離がこれまでより少し縮まったように感じられました。
今回はいつもの『ぐらんぶる』とは違い、酒や下ネタをオチにせず、かなりきれいな形でパラオ編が終わりました。
たまには、こうした真面目で温かい『ぐらんぶる』もいいですね

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